どんな粗末な家でも、我が家はいいものです。私だってそうですよ!
とても落ち着きます
居場所がなくなっていることなんてないでしょうから…
退院前日の消灯までの出来事
貧乏でも自分の家は恋しいものです。 ゼロから築き上げたものだから
とにかく早く帰りたかったのは事実です
我が家は私が50を過ぎてから購入したリノベーションマンションで、数少ない私の財産です
いつも病院の9階の窓から我が家の方向を眺めていました
早く帰りてー
入院初日からそう思っていました
家族はうるさいオヤジがいなくなってせいせいしていたのかもしれませんが…
まだ足元にふらつきがある状態でしたが、
やることが思い浮かぶのです。
ベランダ掃除
この日は勉強もやりましたがその効果と言えば?が付きます。
集中力が途切れます。活字を追ってただけかも
少し眠くなってきた!目を覚まそう!
お世話になったベッドやロッカー、テレビ、冷蔵庫付きのテーブルラック、窓際、しっかりと掃除をして目を覚まします。
荷造りの時
帰る時の洋服も妻に頼んでおいたのですが、洋服のサイズは一回り大きくなっています。喜んでいいのか?危機感を感じなくてはいけないのか? 複雑です
正直、
おしゃれのセンスでは誰にも負けないつもりだったのですが、病気が原因で一気に老けてしまった。
鏡に映る自分を正視できない
初老の域に入ったんだよなー
持っている洋服と容姿が合わない!
持っている洋服のほとんどがボロキレ同然の価値!サイズもおかしい!
ファッションについては、会社の女性にもたびたび褒められたことがある。回りの人と一線を画すといわれるくらい気遣っていた。
毎日、同じ組み合わせを着ない主義!
コーディネートして持ってきてもらったのに、落ち込みました。
似合わねー
こんなに見た目もポンコツになってしまった!
落胆しながらバッグに荷物をつめていく。
バッグと洋服も似合わねー!
どんどん焦ってくる
ラインで急遽、妻に明日の洋服のリクエストを再送信!明日持ってきてもらいます。
この時点での身体の状態
この日は手術から6日目
この日の体調は
元気がありませんと言うよりは、男性であることを忘れてしまったかのよう!
周りから見たら男の色気は全くゼロだろう…
さすが病気のデパートなんて、冗談を言う余裕は全くありませんでしたね
退院前日でこんな感じでいいのだろうか?正直に医師に伝えれば退院が伸びてしまうかもしれないし…
うれしさ半分、不安半分!
身体も心も揺れ動いていました
この日病院での最後のシャワーを浴びている時に下腹部にチクりと言う痛みを感じて、不安は増すばかり…
実はこの事を医師には伝えませんでした
最後に誰にも内緒で賭けをしたのです。この後に異変がない事から見て内緒にしていたことは正しい選択だったと思っています。
こんなことがあって、この下のお話に繋がるわけです。
とてもお恥ずかしいお話
その後、夕食を過ぎるまではYouTubeにて大好きな動画を見て過ごす
元気の素、高中正義「渚・モデラート」ライブバージョン
何回聞いたことか…
こんな艶っぽい演奏ができたら人生楽しいだろうと
下手でも奏者の一人ですから…
楽しい時間と裏腹に、消灯の時間が近づいています
モードは最終章に近づいていく…
相当ネガティブになっていました
答えは簡単です。不安に襲われています
時間が経つにつれて静寂が強くなり、不安が募ります
まだ足元もフラフラでおぼつかないし、これから抗がん剤の洗礼が待っている(まだ周りから聞いているだけですが)。
無様な姿を子供たちに見せるのか?
妻だけを働かせて自分は静養するのか?
仕事に復帰はできるのか?
不安だらけです。
いっそ完全復調するまでいさせてくれればいいなとも思いましたよ!
しかし、復帰も送れるし、次の患者さんがベッドの空きを待っている
そんな時に限って要らぬことがマシンガンにように浮かんできます。
再発したらもう駄目だろうな!人工肛門になったら今の仕事は無理だな!とか今まで考えもしなかった事が…
病室ではいろんな雑音が入ってくる。
混乱した!
落ち着くいつもの場所に行こう
夜9時過ぎの誰もいない暗い廊下です
不安を払拭しようと長椅子に腰を掛けて、ダラッとしていると
とても静かで落ち着いてきます
ホッとしました
あれほど病室では慌てていたのに、どんどん落ち着いていく。
不思議な空間です。目の前は無機質な壁!
ボーっと見ていると何故か
助かった!助けてもらった。ありがとう!
そんな感情でいっぱいになりました。
力が抜けてきて、もしかしたらやり直せるかもしれないと感謝の気持ちで満たされていきます。
正直に言いますと、あきらめの気持ちがずっと残っていて、負けそうになった時もたくさんありました。でもこの時は違いました。
自然に涙があふれてきました
思いがけない自分の一面です
誰もいなかったが、恥ずかしかった。
今までの自分にない部分でした。涙は見せない主義とまで言わないけどほとんど泣いたことがない人間だったので
それがボロボロ泣いています。接してくれた方に心よりありがとうを言いました。
少し涙も収まって、うつむいてもう少し落ち着かせようとしていたところ、誰かの足音が近づいてきます。スルーするまでじっとしていると、私の目の前で足音が止まり
声を掛けられました。
私を入院当初から担当してくれていた若い女医さんです。
いつも何かの節目にいつも姿があった方です。片隅でいつも寄り添ってくれました。
本当はスルーしてほしかった!
悲しい涙ではなかったし…
横に座り、すべてを察しているかのように膝をトントンと叩いて
お疲れさまでした。頑張ったね!
そう言ってくれました。
せっかく泣き止んだのに余計なおせっかい!
私がどういう状況なのかを察し、それ以上はなし。すぐに立ち去って行きました
ふた回りも年の離れた女性を表現しにくい状態で見送った!
尊敬です。カッコよかった
世の中捨てたもんじゃないな!そう思わせてくれた人でした。
人間の生きる厳しさと、色々な感情で混乱していたけど…
温かさで締めくくることができた
真っ暗な廊下での出来事でした
大切なことと向き合い対話できた忘れられないひと時となりました。
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